今回は北仙台の少し先にある堤町に来ています。
北仙台駅はJR仙山線で仙台から2駅、仙台の中心地からはやや離れていますが、商業地と住宅地が混在した地域です。
北仙台の北に位置する堤町、かつては仙台の焼き物の町として栄えていました。
ここにも老舗があるんです。
堤町の幹線道路から一本入り山を登って行った先に……。
だいぶ緑が深い場所ですが……。
ありました!
こちら、芳賀堤人形製造所です。
芳賀堤人形製造所は文化年間に創業したという老舗の人形製造所です。
文化年間は第11代将軍、徳川家斉の時代。
当時半島なのか、島なのかと意見が分かれていた樺太に間宮林蔵が探検をしに行ったのが文化5年(1808年)。
樺太の西海岸の海峡最狭部に達し、そこが海峡であることを確認したのだそうで、間宮海峡と名付けられました。
そんな時代から続く、芳賀堤人形製造所。
中をのぞくと明かりがついていますが、人がいませんでした。
なので、呼び鈴を押して待っていると奥からご主人が出てきてくれました。
「どうぞどうぞ」と、膝をついて挨拶していただけます。
中ではきれいな堤人形がたくさん置いてありました。
すごくきれいで可愛い人形ばかり。
堤人形は「西の伏見人形、東の堤人形」と全国的に土人形の二大源流と言われるほどのもので、堤人形は東北の他の地域の土人形にも多大な影響を与えたのだそうです。
宮城県の指定伝統工芸品にもなっている堤人形ですが、現在では数軒しか作っていないそうです。
この芳賀堤人形製造所は文化年間から続ている老舗で、現在のご主人は13代目の方。
ご主人は「奥で作業もしているのでよかったらどうぞ」と作業をしているところを見学させてくれました。
一つ一つ丁寧に作っています。
今年の干支、猪の堤人形です。
毎年、その年の干支の堤人形を作られているそうです。
一番左は48年前のもの、右二つは12年前のもの。
人形の形や模様など若干違いがあります。
「もうこれを作ったら、次作るのは12年後です」とご主人。
ここで一人、静かに集中して作業をしています。
作業の合間に「ここで今買える堤人形はありますか?」と尋ねてみました。
というのも、芳賀堤人形製造所はデパートなどに卸しておらず、基本的には受注生産でモノによっては数年~10年待ちということもあるそうです。
でも、お店に直接行ってみて運がよければその場で買える人形もあるということで、今回伺いました。
「この猪の人形なら少しだけだったら……」とご主人。
ということで猪の堤人形を購入してきました。
それがこちら。
この存在感、素晴らしいです。
全然古っぽさは感じないデザイン、っていうか、かなりオシャレな感じもします。
「つつみ」って書いてあるんでしょうか?
本当にいい顔。色もすごくきれいです。
我が家のインテリアに素敵な仲間が追加されました。
芳賀堤人形製造所のご主人、突然の訪問にもかかわらず見学をさせてもらえたり、すごく丁寧に対応してもらえたのが印象的でした。
寡黙な方のようですが、柔和で腰も低くて……、長く続く老舗の秘訣はやっぱりこういう所にあるんだな、と改めて感じることが出来ました。
芳賀堤人形製造所 宮城県仙台市青葉区堤町3-30-10